あとがき

        小学校の校庭
        小学校の校庭

今回の旅は、慢性的な運動不足を解消し、さらにお肌もピッカピカになるという、私にとってはまさしく健康を取り戻すための旅となった。しかし、事前に読んだサニッスダー・エーカチャイの著書の内容は頭の片隅から消え去ることはない。

 

経済的に豊かな暮らしと、自然破壊とは確かに相反することが多い。しかし私たちが訪れた村々には水道やトイレさえもないのである。いくら自然破壊を食い止めよと言っても彼らが豊かな暮らしを享受したいという気持ちを押さえることは難しい。私たち日本人が高度成長期を経た上で、ようやく失ったものを見つめ直す気持ちが生まれたように、行き着くところまで行かないと冷静な判断力も働かないのかもしれない。

 

しかし、それも自国民によって自国内で行われた行為という範囲なら反省や軌道修正も容易だろうが、他国の生活を豊かにさせるために犠牲を強いられることとなると話が違ってくるだろう。今回は残念ながらエーカチャイがインタビューしたような人々と出会わなかったが、日本人が「エビを食べたい」ということと、タイ人が「売れるものを売って豊かな生活が欲しい」という影で、土地を奪われたり自然が破壊されているという事実はこれからも頭に置いておきたいと思う。

 

私たちが若者たちと同じようにあえて貧乏旅行をしたり、不便な生活を強いられる旅に出かけていくのも、「豊かな生活だけに慣れてしまいたくない」という本心からなのである。(完)

 

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