いよいよ山場

野菜と卵のサンドイッチを食べ8時半頃出発した。途中時折シャワーのような雨が降って来たが、レインコートは着ないで済ませた。暑くて仕方ないからだ。それにしてもぬかるんだ道は良く滑る。私たちの後ろの方でどしーんとしりもちをつく音がするので振り向いて見るとアーウィンだ。彼はどうやら山道に慣れていないと見える。

 

マーケットで調達した靴はとても優秀で心配した靴擦れもないし、軽くておまけに全然スリップしない。ホッドの勧めに従って正解だった。カレンの村でも同じ靴を履いている人を見かけたくらいだから、マーケットのおじさんも間違っていなかったのだ。後で聞いたところによると、よくこけていたアーウィンが夫に「その靴はいいねえ。どこで買ったの?」とうらやましがっていたそうだ。しかしはたして靴だけの問題だろうか。

 

熱帯樹林のうっそうとした山道にはいたるところに樹木が倒れている。落雷にでもあったのだろうか上部から引き裂かれてしまっている大木もある。

 

そのうちに行く手を阻む巨木が出現した。それは私たちの進行方向右上の崖から左下に向かってどーんと道をふさいでいる。直径は1メートル以上もありそうだ。またいで行ける太さではないし、かと言ってくぐり抜けられるほどのすき間はない。でも男たちは難なく乗り越えて行ってしまった。問題はちびで短足のこの私である。覚悟を決めて大木にしがみついてはみたものの、向こう側へ行くよりも下の方にずるずるとすべってしまう。こんなところでもたもたしてると崖下に落ちてしまうので、服の汚れは気にしないことにしてあちら側に向かって力一杯体を滑らせた。Tシャツを泥だらけにしながらも何とか無事に着地すると、心配そうに見守っていたみんなもほっとした表情だ。

 

広い尾根に出るとしばしの休憩時間となった。みんな思い思いの場所に座り込んで一休みである。あちらの方で「ヘイ・ジャパニーズ・フレンド!」とビットが呼ぶので行ってみると、彼が指さした木の幹に「MICA1995」と削ってあった。彼はにんまりしてホッドのガールフレンドであることを教えてくれた。彼女はなんと5回もこのトレッキングに参加したそうである。なかなかタフな女の子であるらしい。

 

 

11 昼食