タイ北部山岳民族の村を訪ねて1995年               チャンマイのトレッキングツアー  

まえがき

この旅行記は、95年7月に10日間の日程でタイを旅した時の、たった3日間のトレッキングを中心に綴ったものだ。しかし日数は短くてもとても内容の濃い充実した旅だった。

 

私が「東南アジアを知る旅」をしようと決意したのは92年の暮れにマレーシアを訪れた時のことだった。それ以前に何度かアメリカを訪問したりニュージーランドへトレッキングに出かけたりしていたが、このマレーシアを訪れた時ほどのカルチャーショックは経験していなかった。欧米文化の方が身近なものになってしまっていたからだろう。

 

それまでは、近くにあるのにほとんど知ることのなかった東南アジアの国々に強い魅力を感じた私は、この歳で東南アジアフリークと言われる若者たちの仲間入りをしてしまったのである。そして「ビールさえ飲んでればごきげん」という夫を相棒にシンガポール、インドネシア、そして今回のタイと次々に訪れているのである。

 

(注) この旅行の写真は現地で現像したのですが、運悪く定着処理が完全ではありませんでした。画像が見にくいため掲載枚数もごく限られたものになっておりますが、なにとぞご勘弁のほどを!

 

ダレット・レストラン

チェンマイ、ターペー門の上からの眺め
チェンマイ、ターペー門の上からの眺め

チェンマイ到着後、最初の宿泊先に選んだのはムーン・ムアン・ゴールデン・コートというホテルである。4階建で全30室の建物は白い壁に赤い煉瓦の屋根というこぎれいな概観ながら、ホットシャワー・トイレ・エアコン付きでツイン1泊280バーツ(約1000円)の格安ホテルだ。日本の異常に高いホテル代と比較すると、思わずにやにやしてしまうほどのコスト・パフォーマンスの良さである。

 

私たち夫婦がこのホテルに決めたのは、第一にこの格安な料金が気に入ったことと、第二に立地条件の良さだった。城壁の一部を残した形で堂々とそびえ立つターペー門のすぐ近く、しかもお掘のすぐ内側という位置はどこへ行くにも便利だしわかりやすい。

このホテルとはお堀をはさんでちょうど反対側にダレット・レストランがあった。ゲストハウス(一泊数百円程度の安宿)の1階全体がこのレストランになっている。広い前庭も木製のテーブルとベンチが据えられたオープンエアの客席となっており、控えめながら赤・青・黄色の豆電球で電飾された樹木もご愛敬といった風情である。アジア各国でよく見受けられる、外人向け庶民派レストランの典型的スタイルといった感じだ。客層は地元の人たちと欧米人が半々くらいの割合だった。いかにもアジアらしいこんな場所が私は大好きである。料理はヨーロピアンとチャイニーズ、それにタイ料理という無国籍風メニュー構成となっており、結構いけそうな感じだ。

昼食はガイドブックを信用して入ったベトナム料理店が期待はずれだったので、今度は自分たちの嗅覚の命ずるままに決めた店だった。初めての場所で安くて旨い物にありつこうと思ったら、現地滞在の長そうな欧米人、しかもあまりお金持ちではなさそうな連中が大勢入っている所に行ってみるというのが私たちのいつものやり方なのである。

 

やっぱり正解だった。私は野菜いためがたっぷり乗った焼きそばと、中華風に炒めたカリフラワーのカリッとした歯ごたえにとても満足した。日本ではほとんど食べなかったタイ米も現地で食べると格段に美味しかった。美味しい食事にありついた途端、すっかり現地の生活に馴染んでしまうというのは何も私に限ったことではあるまい。この夕食のおかげでようやく「ああチェンマイに来たんだなあ」という実感がわいてきたのだった。

 

2 頼もしい青年ホッド君