今回の旅の目的でもあったバリ舞踊は、ほとんど毎晩のように鑑賞した。中でも圧倒的に群を抜いていたのはグヌン・サリという歌舞団である。
踊りの素晴らしさにも目を見張ったが、そのガムラン演奏のすごさには最初から圧倒されてしまった。しばらくの間カメラのシャッターを押すのも忘れて、ふと気づいた時には ポカンと口を開けたままだった。平均年齢も高く、プロ意識も強いのだろう。キレの良いリズム、メンバーの一糸乱れぬ呼吸、心を引き付けるドラマチックな表現など、始めから終わりまで観客の目と耳と心を引き付けて離さない。
もともと宗教的儀式に神への奉納として行われる踊りや演奏なので、観光客用に演じられるものは結構手抜きが見られるのだがこのグヌン・サリに関してはそういう点は微塵も感じられなかった。
グヌン・サリのカセット・テープはもう売っていないかもしれないという意見を聞き流して、私たちは何軒も探し回った末ようやく目的の物を手にすることができた。もちろん帰国してからも感動の余韻に浸りたいがための、自分たちのためのおみやげである。