いよいよトレッキングも大詰めを迎え、この日は最終22kmの行程だ。
エメラルド・グリーンに輝くアーサー川に沿ってしばらくはゆるやかな下りが続く。川は時おり急流となって両岸に生い茂る木々に水しぶきをあげ、あたりの森はひんやりと湿った空気に包まれている。 やがてアダ湖に出た。
ずいぶん歩いたはずなのにランチ休憩の河原には辿り着かない。二人で時々地図とにらめっこしながら「まだか、まだか」と待ち遠しくて仕方ない。あんまりおなかが空くものだから、道端に座り込んでロッジでもらってきたおやつを一気に食べてしまった。仲間たちが「おや、まあ!」と笑いながら通り過ぎて行く。そこから河原までほんの目と鼻の先だとは知らなかった。
休憩場所に辿り着くと、私たちは中洲に陣取って、靴も靴下も脱いで爽やか気分でサンドイッチを広げた。少し上流、滝下の岩場の辺りでは、仲間たちが日光浴をしながらランチを広げている。
デビィが手を振りながらこちらにカメラを向けてシャッターを切った。それから、急に私たちの少し横の辺りを指差して何か言っている。内容は聞き取れないが、ふとそちらに目をやると、すぐ近くを水面に浮かんだカモが川の流れに乗って通り過ぎていく。「のどかだねえ」と夫がつぶやき、私は思わず目を細めた。
休憩が終わると私たちは早めに出発した。
ここまで来ると、最終地点のサンドフライ・ポイントに到着するのが待ち遠しい気持ちになってくる。すぐ前をシンガポール4人組が歩いているが、彼女たちの足取りも私たちと同じ気持ちであることを表わしている。
結局先頭が彼女たち、二番手が私たちという順番でゴールし、お互いに到着した場面の記念撮影をして喜び合った。ほとんど日本の若い女の子たちのノリだったので、こういうところはアジア人種の共通点なのかもしれない。