峠を下りてようやくクィンティン・ロッジに辿り着くと、夫が「サザーランド滝を見に行こう」と誘う。「でももう滝は見飽きたし」とぶつぶつ言っていると、スタッフの女性にも熱心に勧められた。見逃すと後悔するかもしれないと思えるほどの熱意で「すばらしい滝よ」と言われると、不思議なことに『それじゃ、ちょこっと行って来ようかな』という気になった。
私たちがロッジを出たところで、向こうに見える建物のあたりから女性が近づいて来た。「今日マッキンノンで結婚式を挙げた日本人というのはあなたたちなの?」と尋ねる。 「ええ」と答えると、ニコニコして「おめでとう。あなたたちのことはみんな知ってるわよ。すばらしい結婚式ね」と私の両手を握りしめて祝福してくれた。見ず知らずの人から祝福されて驚きはしたものの、私もニコニコして「ありがとう」と答えた。
30分位歩いて目的地に着いた。いやーすごいのなんの、こんな大きな滝は初めてだ。580mもの高さだそうだ。垂直に落下するのと、水量が多いのとで、そばにはとても近付けない。水圧で吹き飛ばされそうだ。一瞬小さな虫に変身したような錯覚に陥る。ついさっきまで昼寝でもしたい気分だったのに、ここで一気に目が覚めた。
一緒に行ったシンガポールのメイと大騒ぎで記念撮影する。彼女も興奮している。シンガポールには山がないと言っていたから、当然こんな滝は見たことないのだろう。
帰り道、すれちがう仲間たちに「スゴイ、スゴイ!」と連発する。そうして『やっぱり見て来て良かった』と思った。