バリはヒンズー教徒の島である。身分に基づく職業の占有などはインドほど厳しくないが、結婚、儀式の格式、敬語などには細かい規定を持つカースト制度がある。そして80%を占める平民のスードラ階級では、出生順に名前をつけるようになっている。
男女共、第一子はワヤン、第二子はマディ、第三子ニョマン、第四子クトゥ、第五子再びワヤンと戻ることになっている。従ってどこへ行っても圧倒的に多いのがワヤンさんである。
私たちが滞在した、セハティ・ゲストハウスのスタッフは全部で4人、そのうち3人がワヤンという名前だった。マネージャー、チーフ、そして18歳の下っ端君。残りの一人だけがマデさんだ。マネージャーのボス・ワヤンは昨年夏結婚したばかりの新婚ホヤホヤで、州都デンパサールに住んでいる。20歳のワヤン君はデンパサールの大学で英語を勉強しているとのことだが、聞いてみると日本語の方が上手だそうだ。 日本人の滞在が圧倒的に多いこのゲスト・ハウスで働いているからだろう。最年少のワヤン君は今年高校を卒業したばかり、日本語もほとんどわからないため、もっぱら掃除や使い走りの下っ端的存在である。
ところでバリでは日本語を勉強している人が非常に多い。収入源を観光に頼っているバリでは、主要な観光客である日本人抜きに商売は成り立たないからである。観光ビジネスにおいては、客層に対応した外国語能力の有無が稼ぎを決定する。