11月3日、いよいよ結婚式当日を迎えた。
幸い天候にも恵まれ、「天気が良くてラッキーだね」とみんなが喜んでくれる。
U字谷の底を歩く私たちの両手の山肌には、高度230mのクィンティン滝を始めとして、無数の滝が流れ落ちている。正面には、壁のようにそびえ立つマッキンノン峠が迫る。 コース中山登りらしい急斜面はここだけだ。しかし山裾から峠までジグザグに登って行くのでそれほどきつくない。
だいぶ登ったところで可憐な花が咲いているのを見つけた。中の方が黄色で花びらが白い。マウントクック・リリーだ。すぐ後ろを歩いていた横田さんに教えてあげると、早速一眼レフカメラを構えた。まだ時期が早いから少ないのだろうが、それでもまわりを見回すとあちこちに咲いている。
『結婚式のブーケにしたいな』という思いがチラッとは浮かんだけれど、道徳心がそれを打ち消した。
ふと傍らの壁を見ると日陰になったところにキラキラと氷柱が光っている。クリスタルのように透明で美しい。これなら頂いても良いだろう。ちょうど喉が乾いてきたところだったので、ポキンと折って口に入れると、「おいしーい!」と思わず叫んでしまった。
「腹をこわすぞ」と言う夫の忠告をふんふんと聞き流していたが、『おなかをこわしたら後でお説教されるかな』とちょっとだけ心配になったので5本で終りにしておいた。
マッキンノンの記念碑が向こうに見える。この峠の発見者を記念して建てられた石の塔だ。
一帯は地塘が点在する草地になっているが、所々に大きな岩がごつごつ突き出ている。峠の展望台に立つと、1600から1900m級の山々にぐるりととり囲まれた。息を呑むほどの雄大な景色だ。次々に到着する仲間たちと共にしばらく見とれていた。
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