翌日は、アティさんに誘われて彼女の友人の結婚式に参列させてもらった。もちろんモスリム同士のカップルである。
式は約1時間、彼と彼女の職場の上司のお祝いのスピーチ、それとコーランの祈りがある。イスラム教は他の宗教と異なり牧師とか坊さんはいない。その代わりにコーランを詠むプロがいるのである。芝居がかって見えるくらい情感たっぷりに歌うように詠む。しかも音量を最大にしたスピーカーからは、時折キーンというハウリング音が混じるので『少し音量を絞れば良いのに』などと関係のないことをつぶやいていた私だった。言葉がわからないとこうなる。
結婚式の衣装は完全な王族風ペア・ルックで、途中でお色直しもあり結構ハデである。一方振る舞われる会食のメニューはとても質素である。紙箱入りの軽食はバナナの葉っぱに包まれたお餅と、スコッチケーキ、それに大きなえびせんべいみたいなものの3種類で、他には透明のコップに入ったすご~く甘い紅茶と、普通の白い皿に盛られたカレーライスだった。
ここで何より驚いたのは、私たち旅行者にまで参列の仲間入りを許すその懐の広さである。言葉は分からないものの、親戚一同が両手を取って心から歓迎してくれるのである。