さてレイクランドホテルに落ち着いた私たちは、部屋に備え付けのポットでお湯を沸かしコーヒーを飲みながら、ベランダに立った。夕暮れの湖には威勢のよいモーターボートが水面を切って走り、湖岸に迫り立つ山肌すれすれを、小さな飛行機が飛んでいる。すぐ下にあるホテルのプールに目をやると、小学生位の女の子がイルカのように見事に回転を繰り返していた。
「上手だねえ!」と感心して眺めていると、今度はプールサイドの女の子たちが、「セッセッセのヨイヨイヨイ、アルプス一万尺……」とやりだした。もちろん日本人ではないが、何しろきれいな日本語なのだ。思わず英語で「日本語話せるの?」と下に向かって叫んだところ、「まだ話せないけれど、高校で日本語を習うの。」ということだ。ニュージーランドは日本語教育に熱心だとは聞いていたが、まさかこういう伝承遊びまで浸透しているとは知らなかった。遠い異国で日本の文化の一端に触れたような気持ちがして、なんだか無性にうれしくなった。彼女たちは日本人に注目されて、感心されたことがうれしかったのだろうか、何回も何回も飽きずにやって見せてくれた。