ジャワ(ボロブドゥール)旅行記 1994年

Introduction

 海外へ行ったことのある人なら経験があると思うが、出会った人に「あなたの信仰する宗教は何か?」という質問を受けることがある。ちょっと日本に関心を持っている人なら「仏教か、それとも神道か?」などと聞かれることさえある。大多数の日本人にとって、この種の質問はとっても苦手なのではないだろうか。しかしへたに「私は無宗教だ」などと発言しようものなら、危険分子と思われることもあり要注意である。

 

2年前(1992)初めてマレーシアを訪れた時、私はすっかり度肝を抜かれてしまった。明け方ベッドでスヤスヤ眠っていた私の耳に響き渡ってきたのは、すぐ近くに設置された町なかのスピーカーから響き渡る大音量のコーランだったのである。人々は一日5回の礼拝を欠かさないのだそうだ。

ジャカルタの高校生とボロブドゥール遺跡で
ジャカルタの高校生とボロブドゥール遺跡で

 また女性の服装にも驚かされた。何しろモスリムの女性たちは、郵便局や銀行、一般企業で働くOLや、テレビに出演中のアナウンサーでさえも、皆一様にベールを被って仕事をしているのである。どんな時でも必ずベールを被っているのは、私からみればとても不便そうに見えた。最もヘルメットの下からベールの端を垂らし、風にはためかせながらバイクを運転している女の子を見かけた時には、感心するやらおかしいやらで強烈に印象に残った。

 

私はそれまで宗教と日常生活の関係をこのように直接的に目にしたことはなかった。すでに訪れた国といえばアメリカとニュージーランドしかなかったからだ。同じアジアの国の方が欧米社会よりもカルチャーショックが大きいという事実は、私にとっては二重に衝撃だった。東南アジア諸国を片っ端から訪ねてみようと決意したのはこの時なのである。

 

大切な情報収集