ニュージーランドを旅行して感心したことは、トイレが良く整備されているということだ。建物の中もさることながら、公園や山中でも清潔で落書きひとつないという点では日本の比ではない。また車椅子の人が使えるトイレが公園などでも必ずあるというのも当り前とはいえ、日本の実状からすれば驚きだ。私が気がついた限りでは、山中になかっただけなのだ。もっとも、車椅子で山登りはできないので、必要がないということだとは思うが。
もうひとつ、とても便利だったのはどこでも必ずエアータオルが設置してあることだ。もちろん公園などのトイレでも同様だ。 そんなニュージーランドでも「スゴイ!!」と思わず叫んでしまったトイレがあった。もちろん、汚れているわけではない。かといって、スバラシイという意味でもない。問題はひたすらそのドアにあった。
その日マッキンノン峠で結婚式を挙げた私たちが、さあいよいよランチタイムにしようと峠を下って行くと、ランチ用のHUT(小屋)があった。寒さに震えながらその小屋に辿り着いた私たちは、まずお決まりのストーブでお尻を暖め、次ぎにスープを飲んでサンドイッチを頬張った。ひとごこちがついて、さてトイレは?ということになったが、ここではめずらしく小屋内にはないようだ。
外に出て様子を伺うと、あったあった、ちょっとした離れのようなたたずまいでそれが立っている。小屋から20~30m位の距離だ。寒いのにイヤだなあと口を尖らせながら近付くと、ドアが盛大に開いている。ぶら下がっているヒモが強風にあおられピタピタと木製のドアを打っている。
何だかイヤな予感は的中した。中に入ってドアを閉め手を離すと同時に、バァーンとすさまじい音をたててドアが開く。ヒモをしばる場所も見当たらない。結局、片手はずっとヒモを握っていなければならない羽目に陥った。ドアの前に誰かがやって来たら、そしてその時タイミング良く(はたまた悪くか)、オープン・ザ・ドアとなったらそりゃあ悲惨なことになる。おちおち座り込んでなんかいられやしない。私はそそくさと離れを立ち去った。
途中でイギリス人のアニーとすれちがったが、その状況を英語でなんか説明する気にはなれなかった。ゴメンネ、アニー! 彼女がそこでどうしたか、今となっては知る由もない。 (完)
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